雪山登山に挑戦してみようと思っている方が用意しなければいけない道具のひとつに、アイゼンが挙げられます。
滑落防止のため、雪山登山では欠かせないアイゼンですが、様々な種類や装着方法があるため何を選べばいいのか初心者にはわかりませんよね。
そこでこの記事では、ペツルから「クランポン」として販売されているアイゼンの取り付け方についてご紹介していきます。
アイゼンの種類と取り付け方
まずは、アイゼンの種類とペツルについてご紹介していきます。
アイゼンは大きく分けて、アイゼンと軽アイゼンに分けられます。
アイゼンは足全体に10本~12本の爪を持っていて、つま先にも爪が飛び出した構造の大型のアイゼンです。
取り付け方は様々ですが、主にブーツのコバを利用したバインディングで固定します。
以上の特徴から、本格的な雪山登山に使用されており、凍り付いた急斜面だとしても安心して上ることができます。
一方軽アイゼンは、土踏まず部分を中心に4~6本の爪を持っている、小型のアイゼンです。
急斜面には対応できませんが、残雪がある春の登山や、平坦な雪面での使用に適しています。
装着は簡単で、靴にベルトを巻き付ける形で取り付けます。
サイズがコンパクトかつ軽量であるため、「もしかしたら雪が残っているかもしれない」というような季節に登山を行う場合に、保険としてカバンに忍ばせておく使い方も出来ます。
この記事でご紹介するペツルは主にアイゼンを作っており、ラインナップに軽アイゼンはありません。
そのため、ハードな雪山登山向きのブランドだと言えるでしょう。
なお、ペツルのアイゼンの商品名「クランポン」は、ドイツ語のアイゼンに相当する英語です
ここでは、ドイツ語のアイゼンで統一してお話をしていきます。
ペツルのアイゼンの取り付け方は?バインディングシステムについて
続いて、アイゼンの取り付け方法についてご説明する前に、そもそもどういった取り付け方式があるのかを簡単にご紹介します。
ペツルのアイゼンをブーツに取り付けるバインディングシステムには、三つの方式が選べます。
以下でそれぞれについて簡単に解説していきますね。
■FIL-LEVERLOCK(フィル-レバーロック)
ブーツのつま先とかかとに、「コバ」という突起がある場合に使うことができる方式です。
アイゼンのつま先とかかとにはコバを掛ける金具が取り付けられていて、これらでしっかりとホールドします。
脱着が簡単でありながら、頑丈であるため、本格的な冬山登山に向いています。
■FIL FLEX-LEVERLOCK(フィルフレックス-レバーロック)
ブーツのかかとにコバという突起がある場合に使うことができる方式です。
いわゆるセミワンタッチと呼ばれる方式に似ていて、かかとのコバをレバーで押さえたうえで、足の甲のプレートをベルトで固定していきます。
■FIL FLEX-FLEXLOCK(フィルフレックス-フレックスロック)
コバが無いブーツでもアイゼンを取り付けられる方式です。
靴の形状を選ばないため、手持ちのどんな靴でも滑らないようにすることができますが、ベルトで固定するため装着に時間がかかってしまいます。
また、足の甲をしめつけてしまうので血行を阻害しやすく、最悪の場合凍傷を引き起こす恐れがあります。
ペツルのワンタッチアイゼンの取り付け方
それでは、アイゼンのそれぞれのバインディングシステムについて詳しくご説明していきます。
いわゆるワンタッチアイゼンと呼ばれるバインディングは、ペツルの場合FIL-LEVERLOCKが該当します。
ブーツのつま先とかかとについているコバを利用して固定するため、装着が簡単かつ確実という事は、先ほどの項でも触れました。
他にも、スキーブーツにも取り付けることができるというメリットがあります。
詳しい取り付け方は以下の通りです。
①まず、ブーツのつま先のコバをアイゼンのトーベイル(つま先側のバインディング)に差し込みます。
もしこの状態で上から見て、アイゼンのつま先の爪が靴のつま先より2cm以上飛び出していない場合、機能に支障をきたす恐れがありますので、アイゼンのトーベイルの位置を調整して、十分に爪が飛び出すようにしましょう。
②つま先のコバをしっかりとトーベイルに取り付けられたら、今度はブーツのかかとをアイゼンのヒールベイル(かかと側のバインディング)にはめ込みます。
やり方は、靴底をアイゼンに密着させた状態で、ヒールベイルについているレバーをコバの上面に引っ掛けるようにして引き上げます。
取り付けてみて、かかとがアイゼンから浮いてしまう場合には、ヒールベイルの位置を調整する必要があります。
また、アイゼンの一番後ろの爪が、かかとから1cm以上つま先側に引っ込んでいることも確認してください。
もしかかとと爪の距離が1cm未満だったり、爪がかかとから飛び出している場合には、アイゼンの前半分と後ろ半分の間隔をアジャスタで調整しましょう。
③最後に、ヒールベイルについているベルトを足首に巻き付けて、金具でしっかりと固定します。
ペツルのセミワンタッチアイゼンの取り付け方
引き続き、セミワンタッチアイゼンの取り付け方についてご紹介していきます。
いわゆるワンタッチアイゼンと呼ばれるバインディングは、ペツルの場合FIL FLEX-LEVERLOCKが該当します。
特徴としては、かかとにコバがついていれば装着できるので、幅広いブーツに取り付けられるという事が挙げられます。
ただし、スキーブーツには対応していないため、注意が必要です。
詳しい装着方法は以下の通りです。
①まず、ブーツのつま先をアイゼンのトーベイルに差し込みます。
この時、ブーツの底とアイゼンが密着することを確認してください。
雪上などで取り付けた場合、ブーツの底に固まった雪が付着していて、ブーツとアイゼンが密着したと勘違いしてしまうケースがあって危険です。
また、ワンタッチアイゼンの注意点と同様に、アイゼンのつま先の爪が靴のつま先より2cm以上飛び出していない場合、機能に支障をきたす恐れがありますので、アイゼンのトーベイルの位置を調整して、十分に爪が飛び出すようにしましょう。
②ヒールベイルの取り付け方法は、ワンタッチアイゼンの取り付け方と同じなので、前項を参照してください。
③最後に、ヒールベイルについているベルトを足の甲側に回して、トーベイルの穴に通してから、ベルトどうしを金具でしっかりと固定します。
注意すべきポイントをおさえて、しっかりと取り付けてください。
ペツルのストラップ式アイゼンの取り付け方
最後に、ストラップ式アイゼンの取り付け方についてご紹介していきます。
いわゆるストラップ式アイゼンと呼ばれるバインディングは、ペツルの場合FIL FLEX-FLEXLOCKが該当します。
製品名を挙げると、「バサック」「イルビス」「レオパードFL」です。
あらゆる靴に取り付けることができますが、取り付けに手間がかかってしまいます。
詳しい装着方法は以下の通りです。
①まず、セミワンタッチアイゼンと同様にして、ブーツのつま先をアイゼンのトーベイルに差し込みます。
②続いて、ヒールベイルに合わせてかかとはめこみます。
この時、かかととヒールベイルがちょうどよくはまるように、ヒールベイルの位置を調整しておきましょう。
③ヒールベイルについているベルトで、ブーツとアイゼンを固定します。
まず、ヒールベイルについているベルトを足の甲に回して、トーベイルの穴に通し、ヒールベイルの反対側の穴に通します。
ただし、「レオパードFL」の場合は、③でベルトをトーベイルに通す前と通した後に、足の甲から足の裏を通ってひと巻きずつするようにしてください。
④続いて、ベルトを再び足の甲へと回し、ベルトの反対側と金具で固定して、装着完了です。
ペツルのバインディングシステムは交換可能!
以上、バインディングシステムについてご説明してきましたが、ペツルのアイゼンはアクセサリー交換によってバインディングシステムを変更することができます。
つま先側のバインディング(トーベイル)については、FIL(フィル)とFIL FLEX(フィルフレックス)のどちらかから選ぶことができます。
また、かかと側のバインディング(ヒールベイル)については、BACK FLEX(バックフレックス)を購入することで、LEVER LOCK(レバーロック)からFLEX LOCK(フレックスロック)に変更することが可能となります。
トーベイルもヒールベイルも取り付け方は共通ですから、以下をご参考にしてください。
また、靴のサイズに合わせてベイルの位置を調整する時も、以下の手順で行えます。
【交換方法】
事前準備として、ベイルの取り付け向きを間違えないようにあらかじめ確認しておきましょう。
また、アイゼンはとがっていますから、ケガ防止のため手袋を装着することをおすすめします。
①まず、ベイルとアイゼンの接続部を確認し、アイゼンの穴形状に合わせてベイルの角度を調整します。
②アイゼンの爪を足で踏んでしっかりと固定し、ベイルの穴に近い位置にストラップを引っ掛けて、ストラップを引いてベイルを抜きます。
③ベイルのもう片側をアイゼンから抜けば取り外しが完了です。
④ここからは取り付けです。
取り付けたいベイルの片側をアイゼンに取り付けて、②と同様の方法でベイルのもう片側をアイゼンの穴に挿入します。
⑤ベイルの両端がしっかりと取り付けられたことを確認したら、取り付け完了です。
雪山で必須のアイゼン!用途とブーツに合わせて選ぼう!
以上、ペツルから販売されている「クランポン」というアイゼンと、その取り付け方をご紹介してきました。
購入の際には、使用している靴や挑戦する山の状態に応じて、適した製品を選ぶようにしましょう。
雪山登山を安全に行うために必須の装備ですから、しっかりと取り付け方を押さえたうえで山に挑みたいですね。