ケルンはなぜ作られる?登山での積み石に込められた意味とは

最終更新日:2019/01/15

人気のあるアウトドアのひとつに、登山があります。

登山をしたことのある方なら、登山道で積み石を見かけたことがあるのではないでしょうか。

その積み石のことを「ケルン」といいますが、皆さんその意味をご存知ですか?

ここでは、なぜ「ケルン」という積み石が、登山道で行われるのかをお話ししていきます。

登山で見かけるケルンの語源は?

登山をしていて見られる「ケルン」ですが、その語源はどこからきているのでしょうか。

「ケルン」は、英語のcairnからきていますが、本来はアイルランド語のcarntが語源であり、石で築いて作られた塚のことを指していたようです。

そして、登山のときに行われる積み石のことを示すようになり、登山用語としても使われるようになりました。

ケルンというと、積み石の意味として使われますが、他にも意味があり、ドイツの都市としての名前があります。

ドイツ西部にありライン川近くにあるドイツで4番目に大きい都市、ケルン市です。

また、ケルン市にあるケルン大聖堂は、ゴシック様式が施された伝統ある建築として有名です。

ほかにも、ケルン水という意味をもつオーデコロンを生産している都市でもあります。

登山のケルンとは話が少し反れてしまいましたが、積み石を意味するケルンは、世界の山々で行われています。

日本だけでなく、世界の山を登る機会があれば、ケルンを見つけてみるのも楽しみのひとつになりそうですね。

登山で見られる「ケルン」その意味とは?

さて、登山で見られる「ケルン」、積み石のことを意味しますが、では、なぜ積み石が行われるのでしょうか?

元々ケルンは、登山道や山頂などの「道しるべ」として作られてきました。

そして、道しるべとしては、登山道に平行になるよう石が積み上げられています。

天気がいいときは問題なくても、霧などで視界が悪い場合には、ケルンがあると安心です。

ケルンがあったおかげで、正しい方向を見失うことなく、無事に登山ができた方もいることでしょう。

また、ケルンは、事故などで亡くなった方の埋葬場所や避難者を弔う意味で作られたりもします。

その場合は、本来の道しるべの意味を示さないので、気をつけなければいけません。

次に、ケルンの形状ですが、ピラミッドのように円錐状に石が積み上げられています。

ケルンの大きさに決まりはないので、大小さまざまな形がみられるはずです。

登山の際には、ケルンが作られている場所や、形なども比較してみてください。

「なるほど!」と思うことがあるかもしれません。

本来の目的を果たさない!?意味のないケルンの存在

ここまで、ケルンを作る意味が「登山者のための道しるべ」だとお話ししてきました。

しかし、近年ケルンに関して問題になっていることがあります。

それは、本来の目的を果たさない、「意味のないケルンが存在している」ということです。

なぜ、そのようなケルンができてしまったかというと…

登山者がケルンの形状のマネをするなど、ケルンを「遊び心で作っている」からです。

中には、「安全祈願のため」に石を積み上げる人がいたり、「登山の記念になるから」と軽い気持ちでケルンを作る登山者もいます。

特に山頂や屋根に作られていることが多く、登山を登り切った達成感から、つい作ってみたくなってしまうことがあるのかもしれません。

「他の人たちがやっているから」とマネをして作ることもありそうです。

しかし、このようなことをしていれば、本来のケルンが目的を果たせなくなります。

無意味なケルンが作り出す悪影響

ケルンを遊び半分で作ってしまうと、本来の目的である道しるべの役割を果たさないだけでなく、他にも影響が出てきます。

まず、ケルンを作った場所によっては、ケルン自体が崩れて落石が起こり、他の登山者に怪我を負わせてしまう恐れがあります。

また、ケルンを作るために石をかき集めるのですが、元々あった場所の石を動かすことによって、山の土壌が変化したり、動植物の生態系を脅かすことになるかもしれないのです。

例えば、まんべんなく散らばっていた石をひとつに集めれば、土壌が弱くなってしまうかもしれませんし、意味なく沢山積み上げられた石の山は、重く土にのめり込み、育とうとしていた植物の生長を妨げてしまうかもしれません。

面白半分で、どんどんケルンが作られていくことは、さまざまな悪影響があるのです。

ですから、最近では山岳パトロールによって、無意味なケルンを壊していく作業が行われているようです。

ただ壊すだけでなく、石を元の位置に戻さなければいけないため、大変な作業になってしまいます。

無意味なケルンを作ることは、自己満足だけでなく、周りの方の迷惑になっていることを知りましょう。

登山での道しるべが赤テープに!?問題は?

近年、登山道に沿って、道しるべとして「赤テープ」が木につけられているのを見かけることがありませんか?

ケルンは遊び半分で作られてしまっていることもあり、赤テープで道が示されていると、それを頼りに辿っていけばいいため、登山初心者などにとっては助かるものですね。

しかし、この赤テープがゴミとなり、山を汚す原因になっているという問題が出てきています。

古くなった赤テープを付け替えればいいのですが、そのままになっていることも多く、結果としてゴミになってしまうのです。

ゴミとなってしまっては、道しるべとしての意味がありませんよね。

この赤テープ、地元の山岳会の方などが付けることがほとんどのようですが、中には登山者自身が勝手につけてしまう場合もあるようです。

どちらにしろ、つけっぱなしにしてしまうことは避けなければいけません。

登山を楽しむために、自分自身もゴミを出さないことを心掛けましょう。

登山のマナーをしっかり守ろう!

ここでは、登山におけるマナーのお話をしていきます。

〇すれ違うときには挨拶を!

山では、他の登山者と上りと下りですれ違うときに、「挨拶」をする習慣があります。

最近では沢山の登山者がいるため、「挨拶をするのは億劫だ」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、挨拶をすることは、天気の確認をしたり、登山道の様子やケルンの話をするなどお互いの情報交換のきっかけになることがあります。

「挨拶に意味はない」などと思わず、お互いに挨拶をし合い、気持ちのいい登山にしましょう。

〇正しい道の譲り方

すれ違うときに大事なのは挨拶だけではありません。

道の譲り方も大事になってきます。

山道は狭いため、すれ違うときにどちらかが止まる必要がある場合が多いです。

そのとき、上りと下りでどちらが優先かというと、「上り優先」となっています。

しかし、これは基本的な考えであり、状況によってその都度変わってくるものです。

基本をおさえつつ臨機応変に対応してください。

自分より歩くのが速い登山者がいたら、止まって道を譲ることも忘れないでおきましょう。

本来のケルンの目的を取り戻そう!

本来、ケルンとは道しるべの意味があり、登山者の助けとなるものでした。

しかし、近年無意味なケルンが沢山作られたことによって、山に悪影響が出てきています。

無意味なケルンを壊す作業が山岳パトロール隊などによって行われているようですが、なかなか追いつかないのが現状のようです。

ですから、登山の際には、「自分は無意味なケルンを作らない」ということが大事になります。