灯油を燃料とするペトロマックスのランタン・hk500は、独特の揺らぎのある灯りが特徴です。
200以上の細かなパーツから成る精巧な作りは、キャンパーだけではなくランタンの愛好家からも高い支持を得ています。
しかし、その使用は難しいとされていて、特に点灯時に炎上する事例をよく耳にします。
炎上してしまう原因は何なのか、hk500の魅力と使い方とともにお伝えしていきます。
老舗アウトドアメーカーペトロマックスとは?
1910年ドイツで創業したペトロマックスは、創業当時から現在まで変わらない人気を集めています。
製品のラインナップは、創業当時とほとんど変わっていません。
100年余りの間、高い水準で製品を製造し続けていることが、現在でも多くの人から支持される理由です。
数ある製品の中でも、特にランタンにおいては、そのデザインの良さ、独特の灯りの暖かさに定評があり多くのユーザーに愛用されている逸品です。
また、このランタンは灯油を燃料としているため、他のランタンよりも燃料代が安いこと、燃料の入手が容易であることが、さらに評価を高めるポイントとなっています。
かつて大戦中は、ドイツ軍でも使われていたほどで、丈夫さとスペックは折り紙付きです。
この、作りやデザインの良さで人気のペトロマックスランタンのhk500ですが、200を超えるパーツでできており、メンテナンスや扱い方が難しいランタンでもあります。
中でも点灯時の炎上は、よく聞くトラブルの一例です。
野外での火災にも繋がるので、炎上はできることなら避けたいものですが、解決する方法はあるのでしょうか。
次項から詳しくお伝えしていきます。
ペトロマックス・hk500を灯そう!点灯準備をする
点灯時の炎上がとても気にかかりますが、まずはhk500の点火の方法についてご紹介しましょう。
ペトロマックスのランタンの点灯までには、独特の準備作業があります。
この手順を間違ってしまうとうまく灯りが付きませんので、しっかり身に付けておきましょう。
【ペトロマックス・hk500の点灯手順・準備~加圧】
①燃料を給油する
圧力計も兼ねている燃料タンクのキャップを外して、燃料である灯油を注ぎます。
タンクの容量は1Lですが、このあとポンピングで加圧しますので、満タンにはせず7割程度の量に抑えておきましょう。
②マントルを取り付ける
ヘッドカバーとインナーカバーを外し、インナーカバー裏のノズルとガスチャンバーに緩みがないのを確認してからインナーチムニーの下部にマントルを取り付けます。
糸でしっかりと縛り、外れないようにしておきます。
外したカバーを戻す前に、付属している専用スパナで燃料が通る管の上に取り付けられたニップルをしっかりと締めます。
③ポンピングをして加圧する
バルブホイール(青色のつまみ)の矢印を上に向けるように回して、タンクから燃料が漏れないようにしてから余熱バーナーのレバーを閉じます。
加圧計横の圧力調整スクリューをしっかり締めたら、ポンプノブを外してポンピングします。
圧力計をみながら加圧し赤いラインに針が届くまで続けます。
50回から60回ほどが目安です。
ペトロマックス・hk500を灯そう!プレヒートから点灯・消火方法
ポンピングまで完了したら、いよいよ火を入れます。
hk500は比較的大型のランタンですから、ポンピング回数も多く加圧に時間がかかります。
ここまで手間がかかりましたが、点灯するまでにもう一工程ありますのでめげずに取り組みましょう。
【ペトロマックス・hk500の点灯手順・プレヒート~点灯】
①マントルの空焼きをする
余熱バーナーのレバーを開け、グローブの下部からライターなどの火器を近づけて点火します。
バーナーが付いたらマントルに火が移ったことを確認してからレバーを閉じ、マントルが炭化するのを待ちます。
②追ポンピングをしてバーナーに着火する
マントルの空焼きのために、一度余熱バーナーのレバーを開けたのでタンク内の圧力が下がっています。
この圧力を補うために、さらにポンピングして加圧しましょう。
始めの加圧と同様に、圧力計の針が赤ラインに達するまで続けます。
加圧が完了したら、再度バーナーのレバーを開けて噴出している燃料に素早く着火します。
③プレヒートの後に点火
余熱バーナーへの着火ができたら、プレヒート(余熱)を行い、マントルが暖まるのを待ちます。
時間にすると90秒以上、グローブ内部を暖めることになります。
この工程でしっかりと予熱できないとマントルへの点灯時に炎が上がり、炎上することがあります。
タンク内の圧力が下がるとバーナーの火が小さくなってしまいますので、時おりポンピングして加圧をします。
十分にマントル周辺が暖まったらバルブホイールを時計回りに回し、バルブを開いて点灯します。
タンク内の減圧を防ぐため、ここでも追ポンピングをして圧力計の針を赤ラインに合わせます。
消火をするには、燃料バルブを閉め自然に消えていくのを待ちます。
消火後もランタン全体は熱を持ちますので、完全に熱が冷めたことを確認してから収納しましょう。
hk500が炎上!どうすればおさまる?
ペトロマックスのhk500は「じゃじゃ馬」と呼ばれているように、扱い方が難しくクセのあるランタンとして知られています。
hk500の点灯時にバルブホイールを回したときに、燃料が噴出するニップルと呼ばれるパーツから大きな炎が上がることがあります。
かなりの勢いで炎上しますので、周囲のものに燃え移る可能性もありとても危険な状態です。
この時にできる対策を身に付けておかないと、さらに大きな被害を出しかねません。
このようにランタンから大きな炎が上がってしまった時は、慌てずに圧力調整スクリューを反時計回りに回し、燃料タンク内の圧力を抜きます。
スクリューを操作してからしばらくするとニップルから噴き出ていた燃料が燃え尽き、消火します。
ランタンが完全に冷めてから噴き出てしまった燃料を拭き取り、再度ポンピングして点灯作業をやり直しましょう。
ランタンが炎上してしまう原因として最も多いのが、余熱不足のまま点灯してしまうことです。
マントル周辺の温度が低いままバルブホイールを開けてしまうと、本来なら熱で気化するはずの燃料が液体のまま噴出して引火し、燃え上がってしまうのです。
ランタンの炎上を防ぐために
どのような場所で使うのであっても、ランタンの炎上は防がなければなりません。
点灯、消火の方法だけでなく、前述のようなトラブルが起きた時の対処法もしっかりと身に付けましょう。
ペトロマックスのhk500のような灯油を燃料とするランタンの炎上を防ぐためには、以下のような点に注意して点灯作業をしましょう。
・十分に余熱する
・燃料タンクの減圧を防ぐ
特に灯油を燃料とするランタンは、点灯するために十分なプレヒート(余熱)を必要とします。
「90秒以上」という目安の時間を記しましたが、環境や天候などにも左右されますので、そのときの状況に応じて様子を見ながら余熱をしましょう。
また、プレヒートの最中燃料タンク内の圧力はどんどん下がっていきます。
プレヒート中も、ランタンから離れずに追ポンピングをして減圧を防ぎましょう。
タンク内の圧力が低下したままだとバーナーの火力が落ちます。
火力が落ちたままプレヒートを続け、90秒経ったからと燃料バルブを開けてしまうと余熱不十分となり、前項のような炎上を引き起こしてしまいます。
炎上だけじゃない!その他のトラブル対処法
ここまで、点灯時の炎上にスポットを当ててお伝えしてきましたが、ペトロマックスのhk500には、炎上の他にも陥りやすいトラブルがありますので、いくつかご紹介し、対処法をお伝えしていきます。
●余熱用バーナーやマントルの火が消える
余熱用のバーナーも点灯時の燃料も、同じ燃料タンク内で加圧された灯油が使われます。
タンク内が圧力不足だと噴出する燃料も減っていきますから、バーナーが作動している間も常に圧力計のメモリを確認し、追ポンピングを行って失火してしまうのを防ぎましょう。
圧力がしっかりかかっているのに失火してしまう場合は、噴出口にバリやススが詰まっている可能性があります。
付属の掃除用針でススなどを除去することで解消されます。
●余熱用バーナーに着火しない
ポンピング後、バーナーに火元を近づけても着火しないということがあります。
これは燃料タンク内部の圧力が高すぎることが原因です。
ポンピング時には圧力計を確認し、メモリの針が赤いラインを超えないように調整しましょう。
●圧力計の針が動かない
圧力計が動かない原因は、主に以下のようなことが考えられます。
・圧力調整スクリューの緩み
・燃料キャップの緩み
・バルブホイールが開いている
・余熱用バーナーのレバーが開いている
各部の緩みなどを確かめ、再度ポンピングしてみます。
どこにも開きや緩みがない場合にはポンピングを行うためのパーツに不具合がある可能性があります。
その場合にはポンプロッド内の革パッキンを取り出してメンテナンスを行います。
まず、革パッキンが破損や変形をしていないか確認します。
さらに革パッキンに触ってみて、乾いているようであればリュブリカント(ポンピング用潤滑油)や食用油を塗ってよく馴染ませてから組み直し、ポンピングしてみてください。
手元に欲しい一生モノのアイテム
ペトロマックスのhk500は大ぶりなで扱いが難しいうえに高価なため、手が出しにくい印象があります。
価格の部分をクリアしても、使いこなせるかどうか不安に思うかもしれませんね。
火災などのトラブルを招かないためには、炎上などのトラブルが起きた時に落ち着いて対処できるように正しい知識を身に付けて経験を積むことが大切です。
hk500を使いこなすには一筋縄ではいかないかもしれませんが、長く付き合うアウトドアの相棒として、おすすめの品です。