冬の雪山登山をする時は、ラッセル無しでは行えません。
一部の有名ルートなどでは、事前に踏み固められていて、ラッセルの必要が無い場合もありますが、ほとんどの場合でこのラッセル技術は必要になります。
雪山の雪を踏み固めながら道を作っていくラッセルは、通常の登山の何倍も体力が必要になります。
この記事では、そんなラッセルの正しいやり方についてご紹介していきます。
ラッセル登山に必要な基礎知識
まずは、ラッセル登山のやり方の前に、必要になる基礎知識や注意事項についてご紹介します。
◯雪山の危険を常に意識して集中する
雪山では、あらゆる危険が待ち構えています。
雪山を歩く時は、常に集中して歩行するようにして下さい。
また、事前にルートの確認や、危険箇所の特定をしておくことも重要です。
◯常に両手が使えるようにしておく
転倒などに備えて、常に両手が使えるようにしておきます。
ポケットに手を入れながらの歩行などはNGです。
◯歩行する速さに注意する
速く歩行すると、どうしても転倒しやすくなりますし、不意な危険に備えることも出来なくなります。
控え目な速さで歩行するようにして下さい。
◯ストックやピッケルはあくまでも補助的な役割で
ストックやピッケルは、雪山のラッセル登山には必須のアイテムですが、あまり頼り過ぎると雪にとられた時に転倒してしまうこともあります。
あくまでも、バランスを取るための補助用のアイテムとして使うようにして下さい。
他にも注意しておきたい点はたくさんあるので、雪山に入る前に確認しておきましょう。
ラッセル登山に必要なアイテム
雪山のラッセル登山をするにあたって、必要になる服装やアイテムについてご紹介します。
◯服装について
雪山の登山では、やはりそれなりに保温性や防風性が高いものが必要になってきます。
また、アウターは撥水性の効いているものは滑りやすく、滑落した際などに危険があるので、表面がザラザラした専用のものが必要です。
また、アンダーウェアは、吸水性の良いものを選ぶようにして下さい。
◯ワカン
深雪をラッセルする時などに大活躍してくれます。
ワカンを装着すると、足の接地面積が大きくなるので、ラッセルもしやすくなります。
また、歩きにくいふかふかの新雪でも歩行が楽になります。
◯アイゼン
滑りやすい場所を歩行する時は必須になります。
4~6本爪のものを使用することが多く、軽いチェーンアイゼンが着脱も簡単なのでオススメです。
◯ストック
ラッセル登山中にバランスを取ったり、足への負担を軽減するための補助的な役割があります。
雪山では、I字型のダブルストックを使用するのが一般的です。
◯ピッケル
滑落の危険が少しでもあれば必須です。
やや長めのものを用意しておけば、ストックのような使い方も出来るので便利です。
必要なアイテムが揃ったら、いよいよラッセル登山のやり方についてご紹介していきます。
浅い雪のラッセル登山のやり方
まずは、積もっている雪の深さが比較的浅い場合の、ラッセル登山のやり方についてご紹介します。
雪の深さが足首くらいの浅い雪の中を登山する場合は、ラッセルをする必要は無く、スノーシューを装着して普通に歩行しても大丈夫です。
ただしその場合は、雪の表面か滑りやすくなっている可能性もあるので、十分注意が必要です。
雪が膝くらいの深さまでになってくると、ラッセルが必要です。
膝くらいまで積もっていると、もぐってしまった足がスムーズに前に出すことが出来なくなるので、普通の歩行は難しくなってきます。
そういう場合は、もぐってしまった足をやや後ろ側に引き抜いて、その足を大きく外側に円を描くようにしながら前に踏み込みます。
この歩行方法は、普段の登山では疲れてしまいますが、雪山のラッセル登山では大股になる分、歩数を減らすことが出来るので、疲労も軽減させることが出来ます。
深雪のラッセル登山のやり方
続いて、雪が腰くらいまで積もっている時の、深雪のラッセル登山のやり方をご紹介します。
まずはピッケルなどを使って、雪を上の方から足元へ徐々に落としていきます。
その足元に落とした雪は膝を使って固めていき、その上に乗れるように足場を作ります。
足場が出来たらその上に立って、また雪をピッケルなどで落として、同じ方法を繰り返しながら進んでいきます。
深雪ではどうしてもバランスが取りにくくなるので、そういう時はストックなどで突きながらラッセルを行うと、バランスが取りやすくなり、疲労も軽減されます。
疲れてきたら他の人と交代しながら進んでいくと、効率も良くラッセルもはかどります。
また、荷物を持ったままラッセルを行うと、とても効率が悪くなって疲れやすくなるので、荷物は他の人に持ってもらった方が効率的です。
仲間と協力しながら、少しずつラッセルを行うのがうまく進むコツになります。
急斜面のラッセル登山のやり方
傾斜がきつい、急斜面のラッセル登山のやり方についてご紹介します。
傾斜がある場合は、実際には腰くらいまでしか積もっていない雪でも、実質的にラッセルする雪は胸くらいまであることになります。
さらに平地とは違い、斜面を進んでいくので通常の何倍もの労力が必要になります。
このような場合は、一度で雪を踏み込んでいくのでは無く、少量ずつ踏み込んでいくことが重要です。
また、踏み込んだ雪はなるべく水平にすることで、足への負担も減らすことが出来ます。
少しずつ踏み込む分、片足で立っている時間が長くなるので、ストックやアイゼンでバランスを保ちながらすると、疲労も軽減されます。
とにかく少しずつ時間を掛けてするのが、急斜面をラッセル登山する時のコツになります。
その他の状況でのラッセル登山のやり方
その他の様々な状況の時の、ラッセル登山のやり方についてご紹介します。
◯残雪期
春先などの残雪期は、昼間は雪が柔らかくなっているので、足がもぐりやすくなります。
反対に朝夕などの気温が低い時間帯は、雪の表面が凍っているので、その上を歩くことも可能です。
また、雪の表面は凍っているのに、中は柔らかい「もなか雪」と呼ばれる状態の時もあり、その場合は非常に歩きにくくなります。
残雪期はあまりラッセルで苦労することは無さそうですが、雪の状態を見ながら進んでいくことが重要です。
◯森や林など
森や林などは木のおかげで、風の影響は少なくなっていますが、他の状況に比べ積雪量が多くなります。
雪が深くなるので、当然ラッセルも大変になります。
そのため、しっかりとルートを見極めながら進んでいくことが重要になります。
よく利用されるルートになると、テープなどで目印がしてある場合もあるので、それを利用するとラッセルもしやすくなります。
◯岩場や稜線
岩場のラッセルは上級者でも難しくなります。
事前に装備もしっかりと用意しておき、コースも十分に検討することが重要です。
ザイルは必須で、危険を感じたらすぐに使えるようにしておきます。
岩の間などに足を取られたりする場合も多いので、ラッセルに自信の無い方や、初心者の方は避けたほうが無難です。
上級者の方でも、常に細心の注意を払いながら少しずつ進んでいくようにして下さい。
ラッセル登山のやり方を習得して雪山を制覇!
ラッセル登山に必要な装備や、雪山の様々な状況でのラッセル登山のやり方についてご紹介してきました。
どの状況でも、ラッセル登山をする時は常に危険が潜んでいます。
初心者の方はもちろんのこと、上級者の方でも常に細心の注意を払いながら、慎重に進んでいくようにして下さい。
ラッセル登山はとても疲れますし大変ですが、やりきった時は何とも言えない達成感があります。
様々な状況でのラッセル登山のやり方を少しずつ習得して、様々な雪山を制覇してみて下さい。