キャンプでは、ランタンが必需品です。
ガソリンやガス、LEDを利用したものなど、様々なタイプのランタンがあります。
この中でも、夜間に充分な明るさを出すことができるのが、ガソリンやガスを利用したランタンです。
しかしながら、「そこに利用されるマントルから放射線が出ていて危険だ」という話を聞いたことがある方もいると思います。
明るさを考慮すると、ガソリンやガスのランタンの方が明るいですから、すぐに買い替えるわけにもいきませんね。
今回は、そんなランタン用マントルから出る放射線の安全性についてまとめたので、ぜひ参考にしてください。
そもそもランタン用のマントルって何?
ランタンから出る放射線の源になっているマントルですが、電球でいうと、バネのような形で、実際に光る部分です。
マントルがランタンの炎を安定させ、明るさをキープする役割を果たしています。
このマントルがないと、ガソリンやガスにのって炎が勢いよく出るため、火傷や火事を起こしてしまう危険性もあります。
ちなみに、マントルは化学繊維でできています。
そして、マントルは大きく分けて、バーナーの先頭に結びつける吊り下げ型マントルと、マントルをバーナーに差し込むだけの提灯型マントルがあります。
提灯型マントルはオレンジ色に発光し、吊り下げ型マントルは白く発光し、提灯型よりも明るいです。
そんなマントルが光を放つ仕組みについても触れましょう。
まず空焼きという燃焼作業をして、マントルを灰化させます。
灰化とは、燃焼することによって酸化させ、不揮発性の無機物へと変化させることです。
空焼きが終わったら、ガソリンもしくはガスをつけます。
そうすると、マントルの内部にガスが溜まって熱を発し、その熱でマントルが発熱し光を放ちます。
マントルに含まれている放射線物質トリウムとは?
ランタンで使用されるマントルには、光量が出るようにトリウムが含まれています。
トリウムは放射線物質の1つで、放射線を放出している物質を放射線物質といいます。
放射線物質には、トリウムの他にウランやプルトリウム、セシウムなどがあります。
放射線とは、α線、β線、γ線などの電磁波の総称です。
α線とβ線は透過力が弱く、α線は紙1枚で、β線はアルミ板などの薄い金属板で遮ることができます。
γ線は透過力が強く、遮るためには最低でも27cmの厚さのコンクリートブロックが必要になります。
このγ線は、レントゲン検査で使用されているX線と同じ性質を持っていることから、物をよく通す電磁波であることがわかります。
さて、トリウムにもα線、β線、γ線が含まれています。
最も多く含まれているのがα線で、β線とγ線はごくわずかな量です。
地球上にはトリウムが豊富に存在しており、安価で手に入れることができます。
そのため、電球や電子レンジなどの電化製品に使用されていたり、健康飲料として飲まれていた時代もありました。
しかしながら、愛用者からの健康への被害が報告されたこともあり、現在では使用する企業も少なくなりました。
実際ランタン用マントルにはどのくらいの放射線物質トリウムが含まれている?
まず始めに、最近の消費者は放射線物質に敏感になっていることもあり、ランタン用のマントルに放射線物質を含まないように製造している企業が多いです。
しかしながら、トリウムは加熱すると白色に発光するため、明るさを重要視してトリウム入りのマントルを選択する人も多いといいます。
さて、ランタン用のマントルですが、トリウム入りのものは、あらかじめマントルの繊維をトリウムに浸透させ、製造されています。
そのため、利用するマントルの大きさや製造会社によってトリウムの含有量は異なってくるので、具体的な数字を提示するのは難しいです。
しかしながら、マントルの平均の大きさが5~8cm程度になるので、そこに含まれているトリウムは1gあるかないかくらいでしょう。
ちなみに、基本的に現在のマントルは綿素材から作られています。
ひと昔前までは、「シルクライト」と呼ばれる、絹で作られたマントルも売られていました。
現在のマントルとは、比べ物にならない程に光ります。
しかし、放射線物質が検出されたことから、現在では廃番品となってしまいました。
その明るさから未だに愛好者も多く、中古品としてネットなどで取引されてはいます。
ところが、パッケージに「ポケットに入れて持ち歩かないでください」という注意書きがあるので、少し心配ですね。
絹素材のマントルが廃番になって以降、マントルは綿素材から製造されるようになり、放射線物質を含まないように改良され続けています。
ランタン用マントルを長時間使用すると被ばくする?
まず、被ばくというのは、放射線物質から発せられる放射線を体に受けることです。
そのため、原子力発電所の事故による被ばくから、放射線を利用したレントゲン検査による被ばくまで、一言で被ばくといっても浴びた放射線量には幅があります。
実際に地球上にいる限り、私たちは太陽光などから毎日放射線を浴びて被ばくしています。
1人あたり1年間に浴びる放射線量は、平均で2.4ミリシーベルトといわれています。
これらの放射線は、体の修復能力によって、人体に被害を及ぼすことなく吸収されていきます。
さて、ランタン用マントルから発される放射線ですが、半径30cm以内の近距離から放射線測定器で測ると0.07~0.13マイクロシーベルト毎時の範囲で計測されます。
そして、この放射線測定値は、測る距離や遮へいの有無によっても大きく異なってきます。
そのため、実際に利用する時はそこまでマントルの至近距離にいることもありませんから、もっと低い数値になるかと思います。
また、1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルトなので、ランタン用マントルから放出される放射線がいかに微量かがわかるでしょう。
被ばくによって人体に影響が及ぼされるのは、1時間で200ミリシーベルト以上の放射線を浴びた場合といわれています。
また、一般的にいわれている目安としては、500ミリシーベルトで吐き気や嘔吐などの症状が現れるとされています。
さらに2000ミリシーベルトで死亡率が5パーセント、4000ミリシーベルトで死亡率が50パーセント、7000ミリシーベルトで1週間以内の死亡率が100パーセント、20000ミリシーベルトでは数時間以内での死亡率が100パーセントといわれています。
しかし、ランタン用マントルを使用していて、1時間以内に浴びる放射線量は1ミリシーベルトに達することはまずないでしょう。
そのため、ランタン用マントルによる被ばくで、人体に被害が出ることは考えづらいです。
心配であればトリウムなしのランタン用マントルを使おう!
先程もお伝えしたように、絹素材のランタン用マントルは放射性物質が検出され廃番になりました。
また、原子力発電所の問題が世間で騒がれていることもあり、放射性物質を気にする方が増えています。
そのため現在では、トリウムなどの放射線物質を含まないことをセールスポイントにしているマントルの製造会社が多いです。
トリウムが含まれていても、前述した通り、キャンプで使用する分には人体に被害があるとは考えづらいことです。
しかしながら、気になる方は購入する際にトリウムなどの放射性物質が含まれていないか、パッケージを確認するようにしてください。
トリウムなどの放射性物質が入っていないと、ランタンの明るさは低くなってしまいますが、安心して利用できることが1番大切だと思います。
意外と身の回りにたくさんある!身近にある放射線物質を含んだもの!
ランタン用のマントルだけではなく、放射性物質を含んだものは私たちの身の回りにたくさんあることをご存知でしょうか。
1年で平均的に2.4ミリシーベルトの放射線を浴びていることは既にお伝えしました。
放射線はにおいがするわけでもなく、目に見えるものでもないので、無意識に放射線を浴びていても気がつきません。
私たちが普段浴びている放射線は、自然放射線と人工放射線の2種類に分けられます。
自然放射線で代表的なのは、宇宙からの放射線です。
地上に到達するまでに、オゾン層や空気によってほとんど吸収されてしまうため、人体に被害はありません。
しかしながら、その空気を吸い込むことからも放射線を体内に取り込んでいます。
また、岩石にも放射線が含まれていることもあります。
さらにもっと身近なのが、カリウム40などの放射性物質を含む食べ物です。
具体的には、米やパン、牛乳、牛肉、魚、ほうれん草などです。
しかし、これらの食品には放射性物質の基準値が設けられており、その基準値はだんだん厳しくなっています。
また、私たちの体は常に代謝や排出をしているので、取り入れた放射能が蓄積していくこともありません。
そのため、過度に神経質になって食品を選ぶ必要はないでしょう。
そして、人工放射線で身近な例は、X線撮影やCTなどの医療検査です。
また、発芽を防止するために生産過程でじゃがいもへ照射されていたりもします。
それから、強度の高い車のタイヤを製造するために、放射線を利用している企業もあるのです。
正しい知識を身につけてキャンプならではのランタンを楽しもう!
ランタン用マントルを使用する分には、放射線物質の心配はないといえるでしょう。
廃番になってしまった絹製のマントルでさえ、未だに愛用している方がいます。
しかしながら、心配であればトリウムなどの放射性物質が含まれていないマントルを利用するといいでしょう。
明るいランタンを利用して、キャンプを一味違ったものにしてみてください。