雪山などの寒冷地の登山などで、命に関わる恐ろしい症状の一つに、低体温症というものがあります。
症状が出たまま放っておいたら、死亡してしまうことすらあるこの低体温症は、一体どのようなことが原因で起こるのでしょうか?
また、老若男女で発症するリスクに差はあるのでしょうか?
この記事では、そんな恐ろしい低体温症の原因や、対処法、予防法などをご紹介していきます。
老若男女誰もがなってしまう低体温症とは?
低体温症というのは、人の体温が正常より低下してしまうすることによって、様々な症状が引き起こされてしまう状態を言います。
男女の性別や、年齢・体調などによって差がありますが、体温が35℃を下回ったあたりから、低体温症が原因の症状が出始めます。
寒冷地での登山などのアウトドアの時や、海難事故によって長時間にわたって寒い環境にさらされたりした時に発症しやすいようで、アメリカでは年間で600人ほどが低体温症によって死亡しています。
日本でも、低体温症による死者は毎年報告されている怖い症状です。
そんな怖い低体温症にかかってしまう原因や予防方法、かかってしまった時の対処方法について次からご紹介していきます。
冬に登山などによく行く方は、特に注意してご覧下さい。
熱中症より怖い低体温症
夏場などの暑い環境で発症してしまう熱中症は、毎年死者が出ているほど危険な症状として知られていますが、実は低体温症による死者の方が熱中症の1.5倍にもなっています。
2010年以降からほぼ毎年にわたって、1000人以上の死者が出ており、そのほとんどが室内にいた高齢者が犠牲になっています。
近年増えている高齢者の孤独化が原因になっていることが多いようで、特に冬場などは注意が必要です。
ある例では、都内で独り暮らしをしていた89歳の男性と連絡が取れず、心配した近所の人が家を訪ねたところ、体温が27℃まで下がっており、意識が無い状態で救急搬送されたというケースもあります。
医師によると、冬場になると連日のように、このような状態の高齢者が搬送されてくることがあるとのことです。
低体温症と聞くと、冬山の登山をしていて遭難した人が発症するというようなイメージが強いかもしれませんが、実は室内にいて発症してしまう例の方が多いようです。
低体温症になってしまう原因とは?男女関係ある?
低体温症になってしまう原因は、やはり体温の低下です。
では、なぜ人は体温が低下していくのでしょうか?
人は運動などで体内に蓄積させれている熱量が、外気などによって奪われることで、徐々に体温が低下していきます。
その時に暖房器具などで温まると、その奪われた熱量は回復されます。
しかし、熱源などが無い状態でいるとさらに熱を奪われていき、体温が35℃を下回ることがあります。
このような状態になると、低体温症の症状が現れ始めます。
体温が低下していく速度にもやはり個人差があります。
例えば、一般的に男性より女性の方が体脂肪が多いので、体内の熱量が発散されにくく、痩せている人より太っている人の方が寒さに強くなります。
また、筋肉質の人や若い人は体の代謝が良いので、熱量が体外に発散されやくなります。
このように、低体温症になるのは、その人の体質などによって個人差があります。
では、低体温症になってしまうと、どのような症状が現れてくるのでしょうか?
次は、体温別の症状についてご紹介していきます。
低体温症が原因で起こる体温別の症状
もしも、命に関わる怖い低体温症になってしまった場合は、人の体にどのような症状が現れてくるのでしょうか?
体温別にその症状をご紹介します。
◯36.5℃~35℃
意識は正常ではっきりしていますが、低体温症が原因の震えが徐々に出始めてきて、指先で細かい作業が出来ないなどの低体温症の前兆が現れ始めます。
この前兆は、普段体温が高めの人や、男性などによく現れます。
◯35℃~33℃
少しずつ低体温症の症状が現れ始めます。
何事にも無関心になってきたり、普通に見えても言動が少しおかしかったりしてきます。
また、震えがはっきりとしてきて、眠くなったり歩いていておぼつかなくなるなどの症状もあります。
◯33~32℃
会話がうまく出来なくなってきます。
人によっては、意識が無くなり危険な状態に陥ることもあります。
◯31~30℃
意識が錯乱状態に陥ります。
体の震えは無くなりますが、体を動かすことが困難になります。
◯30~28℃
半昏睡状態に陥り、心拍数や脈拍が呼吸数が減少し、脈拍も弱くなってきます。
◯28~25℃
完全な昏睡状態に陥り、心室細動が起こります。
◯25℃以下
仮死状態になってしまい、体の反射機能が失われます。
◯20℃以下
体内のほとんどの機能が失われ、脳波も消失し心停止してしまいます。
低体温症が原因で起こる症状への対処方
もしも、自分や近くにいる人に低体温症が原因と見られる症状が現れた場合は、何か対処法があるのでしょうか?
まずは、一番の原因である体温の低下を抑える必要があります。
外にいる場合は、一刻も早く雨風をしのげる場所に移動し、何かで暖が取れる場合はすぐに体を温めます。
着ている服が濡れてしまっている場合は、乾いている物に着替えます。
また、何か温かい飲み物などがある場合は、それを飲むのも有効ですが、アルコールやカフェインが入っている場合は、血管を拡張させたり収縮させることがあり、逆効果になる場合があるので注意が必要です。
他にも入浴や暖房器具などで、冷えきった体を急激に温めるのも注意が必要です。
急激に体を温めることで、冷えていた手足などの末端の血液が体の中心部まで流れてしまい、それによって逆に体幹を冷やしてしまう恐れがあるからです。
症状が現れた場合は、まずは体温の低下を抑え、少しずつ体を温めることが重要です。
それでも症状の改善が見られない場合は、すぐに救助を要請し、医療機関での治療を受けるようにして下さい。
低体温症は、老若男女問わず誰でも発症する可能性があるので、特に寒冷地などに行く場合は十分注意するようにして下さい。
低体温症を予防するには?老若男女共通の予防方法
低体温症の原因や対処方法についてご紹介しましたが、やはり何よりも低体温症にならないことが一番重要です。
老若男女問わず、以下のようなことに注意して低体温症にならないような予防をして下さい。
◯周囲を常に温かい環境になるように保つ
周囲を温かい状態に保っていれば、体温の低下も防げます。
特に高齢者がいる場合は、室温が20℃以上にはなるように注意して下さい。
◯外出する時は薄着をしない
特に冬場に外出する時などは、重ね着をしたり、マフラーや手袋などの防寒具を使ったりと、体温の低下を防げるような格好をして下さい。
◯温かい食べ物・飲み物を摂取する
冬場は特に食べ物や飲み物にも注意が必要です。
温かい食べ物や飲み物を摂取することによって、体を内部から温めることが出来ます。
そうすることによって、体温の低下を防げ、低体温症の発症も防げます。
また、アルコールが体を温めると思われがちですが、実際には体の熱を発散させてしまうので、逆効果です。
以上のことに注意して、低体温症にならないような環境を作っていきましょう。
しっかりと低体温症対策を行って予防しましょう
せっかくの楽しい登山も、低体温症にかかってしまったら登山どころではなくなってしまいます。
それどころか、重症化したら命を落としてしまうことすらある恐ろしい症状です。
まずは、低体温症になる前に、男女ともその原因に対してしっかりとした対策を行って下さい。
もし低体温症にかかってしまった場合も、初期の段階からしっかりと対処するようにしましょう。
低体温症をしっかりと意識して、楽しいアウトドアライフをお過ごし下さいね。