「日本百名山」は山を登っている人なら一度は聞いたことがあると思います。
その百名山には、北海道からも9つの山が選ばれています。
北海道の山というと「難易度が高そう」と思われがちですが、季節によっては安全に登れる山もあります。
ここでは、日本百名山に選ばれた9つの山についてご紹介します。
そもそも日本百名山とは?いつ誰がどうやって決めたの?
まず百名山についてですが、「日本百名山」と「北海道百名山」というものが存在します。
●「日本百名山」について
百名山と名づけられたものは、いくつか存在していますが、ここでは「日本百名山」の著者、深田久弥氏が選定した百名山に基づいた情報でご紹介します。
深田久弥氏は、いくつかの選定基準を設けて100座を選定しました。
・山の品格
・山の歴史
・山の個性
以上の3つを基準として100個の山が選ばれています。
その他の条件としては「自身が登頂した山であること」「1500m以上である」という基準を設けましたが、実際には1500m以下の山も5つ含まれています。
「1500mには及ばないが、この5つの山は例外である」と自身が述べています。
●「北海道百名山」について
北海道百名山と名づけられたものも、いくつか存在しています。
2000年に北海道新聞社が選定した北海道の百名山があります。
その他に、山と渓谷社が選定した「北海道百名山」も存在しています。
若干趣向が異なりますが、82座が重複しています。
それでは、深田久弥氏が選定した「日本百名山」の中に選ばれた北海道の山について、特徴や難易度等をご紹介します。
百名山の最北に位置する1番目の山!利尻山は高山植物の宝庫
・01 利尻山(りしりざん)
北海道の道北に位置する利尻山は、日本海に浮かぶ利尻島に位置する独峰です。
南峰は1721m、手前の北峰は1719mとなりますが、最高峰の南峰は崩壊の危険があり、2018年現在は立ち入り禁止とされ、北峰が頂上とされています。
高山植物が綺麗な山としても知られており、夏山シーズンの7月から8月には、高山植物の見頃ですので、この時期の登山がお勧めです。
深田久弥氏の日本百名山では、「利尻岳」と記載されています。
登山道はいくつか存在しますが、人気のルートは、利尻北麓野営場からの登山ルートで往復8時間前後のコースです。
難易度としては中級者向けの登山コースとなります。
利尻山は北海道の山としては珍しく、ヒグマが生息していないとされていましたが、106年ぶりにヒグマが上陸した可能性が高まり、2018年6月にクマの足跡やフンが見つかりました。
利尻山は成層火山ですが、現在は火山活動は一切ないため、噴火の心配はありません。
それでも頂上付近は滑る石が多く、転落や落石に注意が必要です。
北海道の道東に位置する百名山は3座!難易度低めの山も
北海道の道東には3つの山があります。
・02 羅臼岳(らうすだけ)
知床半島に位置する、標高1661mの知床最高峰の山です。
成層火山ですが、500年以上前から火山活動はなく、山頂付近の溶岩ドームや、多数の崩壊地形が特徴の山です。
登山口は2箇所ありますが、最短コースでも往復で8時間以上かかり、7月でもアイゼンが必要になるほど雪が残っています。
また、ヒグマの生息地であるため、初心者にはお勧めできず、難易度は高めで中級者から上級者向けの山となります。
・03 斜里岳(しゃりだけ)
百名山の3番目に選ばれたのは、知床半島に位置し、広大な裾野をもつ標高1547mの斜里岳です。
山頂に掲示されている標高は1545mですが、国土地理院の山岳標高には1547mと記載されています。
斜里岳もはるか昔に火山活動を停止した成層火山で、山頂には溶岩ドームがあります。
登山ルートはいくつかありますが、一番メジャーな清岳荘からの登山ルートで往復7時間程かかり、沢付近を歩く箇所もあるため、初心者には向かず、中級者向けの山となります。
・04 阿寒岳(あかんだけ)
4番目は、釧路市に位置する、雄阿寒岳(標高1370m)と雌阿寒岳(1499m)の2つを持った阿寒岳です。
特に雌阿寒岳は往復4時間弱で登れることや、麓の阿寒湖を眼下にすることができ、初心者にもお勧めの百名山の一つです。
どちらも活火山です。
雄阿寒岳はすでに活動していませんが、雌阿寒岳は今も活動しており、今も噴煙が出ています。
雌阿寒岳は距離が短く初心者にもお勧めですが、活火山のため、火山情報を前もって調べておく必要があります。
北海道の道央には4座!百名山で唯一のカタカナ表記の山も
・05 大雪山(だいせつざん)
大雪山は特定の山ではなく、北海道の中央に広がる多数の山をまとめた名称です。
「大雪山系」と呼ばれることもあります。
大雪山にある旭岳は、大雪山および北海道内にある山で最高峰の標高2291m、ロープウェイで手軽に登れる山とあって初心者にも人気の山です。
ロープウェイで一気に標高1600mまで行き、そこから旭岳までは2時間半程の登山道です。
初心者にも人気の山ですが、途中、ガレ場と急斜面を登る道があるので、落石等に注意が必要です。
・06 トムラウシ山(とむらうしやま)
標高2141mのトムラウシ山は、大雪山系のほぼ中央に位置し、百名山の中で唯一のカタカナ表記の山です。
これはアイヌ語のまま呼ばれているためで、トムラウシとは「水垢が多い場所」「花の多い場所」という意味があります。
トムラウシ山といえば、まだ記憶に新しい山岳遭難事故が有名で、夏山にも関わらず、登山者が低体温症で死亡した事故がありました。
登山ツアーでの事故のため、ニュースでも大きく取り上げられましたが、最短コースでも往復10時間はかかる山のため、初心者には向かず、上級者向けの山となります。
ツアーだからと言って安心できませんので、トムラウシ山は様々な登山経験を得てから挑戦することをお勧めします。
・07 十勝岳(とかちだけ)
標高2077mの十勝岳は、今も火山活動が続き、ダイナミックな景色と数多くの高山植物を見ることができる山です。
最短ルートでは往復6時間程のコースで、初心者でも登ることのできるルートもあります。
十勝岳へはいくつかの登山ルートがあり、周囲の山との縦走も楽しめるため、登山者には人気の山です。
登山口へ行く途中には、観光で有名な「青い池」もありますが、雨の翌日は水がにごっているため、晴れた日の翌日に行くのがお勧めです。
また、青い池へ行くための「白樺街道」は片道1車線のため、週末や連休は渋滞することもあるので、朝早くに行くとよいでしょう。
・08 幌尻岳(ぽろしりだけ)
日高山脈の最高峰、幌尻岳は、標高2052mの「神が住む霊山」と言われています。
アイヌ語で「ポロジリ」に由来し、アイヌの人々からは「大きい山」として、古くから信仰の対象とされてきました。
沢歩きが必要となる箇所があるため、難易度は高く、初心者にはあまり向きません。
夏でも沢の水は冷たく、雨が降ると増水して危険です。
そのうえ、同時に水を求めてやってくるヒグマへの遭遇率も高い山となっています。
山中では、物音がすると動物のほうから逃げていくため、動物と遭遇する確立は低いのが一般的ですが、川の付近は、川の流れる音で、人間の足音や話し声がかき消されてしまいます。
そのため、お互い気づきにくくなり、突然遭遇してしまった場合は、動物がびっくりして人間を襲ってくることがあります。
川付近を歩く時はかなりの警戒が必要です。
9番目の百名山は、難易度も手頃で観光にもお勧めの蝦夷富士
・09 羊蹄山(ようていざん)
標高1898mの羊蹄山は、道央に位置する独立峰で富士山に似ていることから、蝦夷富士(えぞふじ)と呼ばれています。
羊蹄山も成層火山ですが、すでに活動は停止しており、頂上付近の火口には圧倒されます。
富士山と同じくお鉢めぐりも堪能できます。
200種類にも及ぶ高山植物は、見事なお花畑で、まるで雲の上の庭園のようです。
また、雪解けの時期には火口に水がたまり、湖となることから、幻の湖とも呼ばれています。
限られた時期にしか見ることができない湖は、なんとも神秘的です。
羊蹄山の4つの登山ルートは、どのルートも往復8時間~9時間前後のやや長めのコースです。
そこそこ登りがいのあるコースで、適度な難易度もあります。
登山の初級コースを卒業したい人には、北海道の百名山の中では、お勧めの山でしょう。
難易度が低くても魅力的な山は北海道にたくさん!
以上の9つが、北海道で百名山に選ばれた山ですが、惜しくも選ばれなかった山の中には、まだまだ魅力的な山がたくさんあります。
その中の一つの山をご紹介します。
北海道外からでもアクセスしやすく、難易度も低めで、北海道の大自然を味わうことのできる山です。
・樽前山(たるまえざん)
今も煙をあげている活火山ですが、最高点の火山ドームで1041m、東山で1022m、西山で994mの山です。
昔は火山ドーム付近まで近づくこともできましたが、今はロープが張られ、ドーム付近まで近づくことができなくなりました。
山小屋のある7合目まで車で行くことができ、駐車場からは早い人なら1時間もかからず頂上まで行くことができます。
途中の登山道からの眺めは絶景で、近くの支笏湖と麓の苫小牧市が一望できます。
頂上の溶岩ドームを周遊することもでき、頂上にある樽前山神社奥宮は、まるで苫小牧市を見守るかのように、存在しています。
千歳空港から車で高速道路を使うと、1時間半もあれば登山口まで行くことができ、樽前山の登山口から車で3・40分の所には、「オートリゾートアルテン」があります。
ここにはキャンプ場やカヌー、バーベキュー、お風呂もありますので、アウトドア好きにはお勧めの場所です。
北海道の山は地形も動物も本州の山とは違った魅力が満載!
本州の山は、周辺に人工的なものが多く感じられますが、北海道の山は、人の手が及んでいない場所が多く残されています。
北海道にしか生息していない動物も多く、エゾシカやキタキツネはあちこちに生息しているので、登山中にも遭遇する可能性が高い動物です。
北海道の山というと、難易度が高いイメージがありますが、初心者でも登れる山もありますので、まるごと残された本当の自然を、ぜひ感じてみてください。