「高山病は山でかかるもの」「普通の海外旅行に高山病なんて」と思う方は多いでしょう。
しかしこれは間違った認識です。
訪れる国によっては、高地に観光スポットがありますので、十分に気を付けなければなりません。
本記事では、スイス観光にスポットをあて、高山病の知識と対策をお伝えしていきます。
登山しなくてもかかる?スイス旅行で高山病
高山病は登山のときにかかるものと思っていませんか?
世界には、様々な標高に国土がある国が存在します。
中でも山岳国と呼ばれるスイスでの旅行では、登山者に限らずだれもが高山病にかかる可能性があります。
スイス旅行の醍醐味は、高原を訪れることや、ユングフラウやマッターホルンなどの山々をみに行くことです。
そのような観光スポットは標高が高く、標高3,000mを超える展望台に行く機会も多くなります。
ユングフラウヨッホ駅で標高3,454m、ツェルマットからゴンドラとロープウェイで上がるマッターホルン・グレッシャー・パラダイスに至っては3,883mと富士山の山頂(3,776m)よりも高い地点になります。
そのような高地に何の準備もなく行ってしまうと、体調の良し悪しに関わらず高山病にかかってしまうのです。
個人差はありますが、高山病は3,000mの高度で10%、3,500mの高度で30%の人にかかるといわれています。
特に高齢の方や子供が同伴している場合は注意が必要です。
次項からは高山病の詳細と対策についてご紹介します。
高山病とは
高山病は、頻繁に登山に行くのでもない限り、自分がかかってみるまでどのような症状かわかりませんよね。
軽い症状のものは「山酔い」ともいい登山愛好家には予防や対策は常識ですが、登山をしない人は高地の観光に出かける前に準備と正しい知識を持つことが重要です。
高地では酸素濃度が低く、3,000mの高度では低地の3分の2ほどしか酸素がありません。
高山病とは、高度が上がり体内の酸素が欠乏することで起こる諸症状を指します。
普段、低地で生活している人が高地に赴くと頭痛や吐き気、眩暈などに襲われることがありますが、これらの症状を総じて「急性高山病」と呼びます。
先ほども述べましたが、スイス旅行ではこのような高地に観光スポットが多く、知識のないまま訪れることは非常に危険です。
症状が軽度のうちに酸素を投与する、下山するなどの処置をすることで高山病の症状は回復します。
しかし、高山病に対する十分な対策をしていなかったり処置が遅れると、昏睡状態におちいり「高地肺水腫」「高地脳浮腫」を発症し、最悪の場合死に至ることもあります。
自分でできる高山病対策
旅行先で高山病にかかってしまわないためには、どのような対策ができるでしょう。
まず、前項でもお伝えしましたが、高山病について正しい知識を持つことです。
そして、自分が行く旅行先がどのような土地なのかを知り、無理のないプランを組んで出かけましょう。
例えばスイスの場合だと、高山鉄道で展望台のあるユングフラウヨッホ駅まで登ります。
途中駅で下車せず一気に終点まで行くと、駅を降りたとたんに気分が悪くなることも考えられます。
体を高地に慣らすため、途中で降りることも考えておくと良いかもしれません。
さらに、旅行先での高山病の発症を防ぐために、以下のような対策をしておきましょう。
・ゆっくり呼吸をすることを意識する
・急激な運動をしない
・水分を多く摂る
・食べ過ぎないよう注意する
・興奮したり、怒る、騒ぐことをしない
落ち着いて深呼吸することを意識し、行動もゆっくりすることで体内の酸素が急激に減ってしまうことを防ぎます。
また、高地で歩いていると、体力や脚力に自信のある人ほどペースを守れず、ハイペースになりがちです。
高地で階段を上がったりするときは、意識してゆっくりと足を動かすようにしましょう。
ペースが速いということは呼吸が浅くなり、それだけ多くの酸素を必要とします。
酸素濃度の薄い高地の場合、体内の酸素を失うことは命にかかわることですから、「意識したスローペース」を心がけて行動しましょう。
スイスでは観光客向けに高山病対策をしている
高山病の症状をなくし、回復させるには高度を下げることが1番です。
辛くて動けないからといって、いつまでも高地に留まっていては症状は治まらず、悪化してしまうこともあります。
体調の様子をみながら、下山できる方法を選択しましょう。
また、症状の悪化を防ぐ方法として、酸素ボンベで酸素の吸入をすることが挙げられます。
多くの観光客が訪れるスイスの高地にある観光スポットでは、観光客向けに酸素ボンベの販売を行っています。
観光地で売られている酸素ボンベは、簡易的なものですので症状を緩和させる程度であり、応急処置的な使い方になります。
観光客向けにこのような対策が取られているのは、高地の観光地ならではといえます。
海外旅行では、酸素ボンベを持っていくことはできないので、このように現地で入手できることが分かっていると安心です。
高地への旅行の際には、現地でどのような対策ができるか、現地調達できるものはあるのか事前に情報を得ておくと安心ですよね。
高山病を発症してしまったら
どれほど高山病対策をしていても、頭痛や眩暈などの症状がでてしまうことがあります。
「息苦しい」「頭が痛い」「吐き気がする」などの高山病を発症してしまったら症状が軽いうちに低地へ降りるのが鉄則です。
この時に、スイスをはじめ高地にある観光地では、前述のように酸素ボンベを入手することができますので、少しでも症状を軽くするために活用するようにしましょう。
これらは高度を下げることで回復する症状なので、下山したらすっかり元通りになったという人もいます。
しかし、一度は体調が崩れたのですから、その後の工程に参加するなどの無理はせず、ホテルで安静に過ごしましょう。
家族や友人などの親しい間柄で少人数での旅行であれば気兼ねすることなく気分が悪いことを言えますが、団体での旅行の場合は「迷惑がかかるから」と遠慮が出て言い出せず我慢してしまいがちです。
しかし、そのためにさらに症状が悪化してしまう可能性もありますので、少しでも気分が悪かったり異常を感じたら添乗員や周りの人に申し出ましょう。
日常とは違う環境下で行動する旅行、特に海外での旅行では、早い段階の申告が自分の身を守ることに繋がります。
スイス以外の高地にある観光地でもしっかり対策して高山病を防ぐ
スイスの高地にある観光地に注目してきましたが、世界にはスイスのほかにも山岳国があります。
山はなくとも標高の高い観光地も存在します。
中には降り立った空港の標高が3,000mを越すところもあります。
【高地にある観光スポット】
●ペルー・クスコ
クスコ空港は海抜3,360mです。
プランによっては海抜の低い空港からクスコ空港への移動もあり、空港を降りたとたんに軽い高山病になるケースもあります。
●アメリカ・ハワイ州 マウナケア山
標高の低い海沿いの町から、レンタカーを使って山頂まで行くことができます。
マウナケアの標高は4,207m。
途中の休憩で体を高地に慣らすことは必須です。
●フランス・シャモニー エギュー・ド・ミディー展望台
モンブランを含む西アルプスを望めるエギュー・ド・ミディー展望台ですが、その標高は3,842mあります。
展望台までロープウェイとエレベーターで上がるのですが到着地点は富士山よりも標高が高いため注意して動かないと頭痛や眩暈をおこします。
ここに挙げたのは一例ですが、どの土地へ訪れることになっても、そこが高地であれば高山病になる可能性はゼロではありません。
知識と対策をしっかりと身に付け、楽しい旅行にしましょう。
高地であることを理解し高山病に備える
最近では乗り物に乗ることで、高地への観光がより楽にできるようになりました。
自分の足や体力を消耗することなく、素晴らしい景色がみられるのはとても良いものです。
しかし、高地での活動は低地とは違うことも理解しておかなければなりません。
しっかりと対策をしておくことが大切です。