カラビナは、クライミングをするのに不可欠な用具の一つです。
そのため、クライミングを本格的に楽しまれる方なら、カラビナをこだわって揃えていることでしょう。
その形は人気があり、キーホルダーのような小物にも使われています。
今回は、そんなカラビナについて、強度と安全性のお話や、消防用のカラビナについても書いていきます。
メンテナンス方法もお伝えしますよ!
登山や消防にも活躍!カラビナって?
カラビナは、ロープやスリングを通して連結させたり、ギアをかけたり、クライミングする際に頼れるアイテムになります。
消防士さんが使っていることでも知られていますよね。
アウトドア好きならご存知かと思いますが、楕円や歪んだ円錐型の金属製の輪っかで、一部が開閉するようになっている形状です。
もし、あまり険しくない登山でも、万が一バランスを崩して下へ落ちてしまったりする際に、引き上げることができますので、常備しておきたいものですね。
緊急時のテント(ツェルト)を張るときにも活躍します。
そんなカラビナですが、種類がいろいろとありますので、いくつか簡単にご紹介します。
〇HMS
ハーネスに直接つけるタイプの、上下で幅が異なる円錐のような形のカラビナです。
ゲートの開閉も大きいため、ロープを出し入れしやすいのが特徴です。
〇オフセットD
こちらは、カラビナの代表的なタイプです。
ロープをかけた力点が、カラビナのゲートではない側「スパイン」に近く、その分安定します。
衝撃にも強く、強度も十分なのに軽いものも多いです。
〇オーバル
昔からあるカラビナで、幅の広いプーリー、スリングに向いています。
力点は、少しゲートよりです。
カラビナの強度を確認してみよう
では、カラビナの強度を知るためには、どこに注目したらいいのでしょうか。
一番安心できるのは、「UIAA」や「CE」というマークを見ることです。
「UIAA」は、国際山岳連盟の安全基準のことで、明記されていればその基準を満たしているということです。
そして、「CE」というのは、ヨーロッパ基準です。
また、「KN」というのは、安全基準表示の後に書かれていて、矢印の方向にひっぱった場合の強度のことです。
単位はキロニュートンで、10キロニュートンが、約1トン。
文字に対して縦方向の矢印は、ゲートが開いた際の強度になります。
同じく、単位はキロニュートンです。
お手持ちのカラビナがある場合は、このような数字を見比べてみるのもいいですね。
ゲートが開いた状態ならこのカラビナが強くて、閉まっていればこのカラビナが強い、と分析するのも面白いですね。
ただ、新品時には強度の強いものも、使い続けていると強度が弱くなってしまうこともあります。
そのため、消防士さんもそうですが、しっかりメンテナンスしておくことが大切です。
ロックのタイプから考えるカラビナの強度
カラビナの強度ですが、種類や安全基準の他にも、カラビナの強度を左右する要素があります。
それは、ロックがついているか、ということです。
登山用に購入するなら、だいたいロックがついているものを選ぶと思いますが、ロックにもタイプがあります。
スクリュー・ツイスト(オート)などのタイプがありますが、もっとも安心できるのはスクリューロックです。
これは、安全環がネジのように回り、上下に動きロックされる仕組みで、自動的にロックされるツイストよりも確実な印象です。
もちろん、ツイストにも安全性が高い商品がありますし、ゲートを閉め忘れるのが不安な方にはおすすめです。
ただ問題は、他のタイプのロックのカラビナや、キーホルダーのようなロックの無い大きなカラビナです。
クライミングや消防では決して使えないカラビナなので、注意しましょう。
ファッション感覚でリュックに付けたり持ち歩く方もいるようですが、クライミングには持っていかない方がわかりやすいかもしれませんね。
消防士さんが使うカラビナ!強度はどのくらい?
消防士さんが、救助ロープにカラビナをかけた際は、「カラビナよし!」と大声で言って、きちんと確認できていることを仲間に伝えたり、自分自身で確認します。
訓練を見たことがある、という方は聞いた経験もあるかもしれません。
消防士さんが使うカラビナは、一つで160kgの重さに耐えることも可能なものです。
いろいろなタイプを災害現場によって使い分けますが、一番多いのは、O型環付きのカラビナです。
その強度は、安全環を閉めた状態で、縦方向で1.6トンにもなります。
横方向や、安全環がないものは弱く、消防では使いません。
ちなみに、横に引っ張られるリスクがある場合やロープをいくつも使用する際は、カラビナを2つ使用します。
そして、向きは逆にします。
そうすることで、環が重ならず、万が一開いてもロープが外れる心配はありません。
これは消防の基本ですが、クライミングする際にも参考になりますね。
消防の現場でも!カラビナのメンテナンス
カラビナはきちんとお手入れしないと、使いにくくなる場合があります。
消防士さんが使うO型環付きのカラビナも、安全環が回しにくくなることがあり、メンテナンスは欠かせません。
自分のカラビナを、潤滑剤、クレ556などを使って吹きあげたり、パーツクリーナーできれいにしたり、中には金管楽器のバルブオイルや、鉛筆の芯の粉を使う方もいます。
(呉工業製のクレ556は、錆を防ぎ除湿効果や防湿効果もあり、ありとあらゆる金属に使えると評判のアイテムですが、一方で使いにくいという意見もあるようです。)
また、クライミングに使用しているカラビナも、ロープや砂とこすれているうちに表面がザラつき、ロープを毛羽立たせてしまうことがあります。
そんなときは、カラビナをやすりで削って磨き上げ、ピカピカの状態に復活させましょう。
#800の紙やすりでも十分です。
あまりにも劣化がひどいなら、強度が高い新品に買い替えましょう。
登山に欠かせないロープ!強度が高く安心なのは?
カラビナの強度について書いてきましたが、クライミングにはロープとスリングも欠かせません。
スリングは「抱っこ紐」という意味で、ロープより太く平たい輪になっている紐です。
体を固定させる胸のあたりのハーネス・チェストハーネスを作るために使われます。
スリングでチェストハーネスを作って、カラビナでロープとつなげれば、安全性の高いアイテムになります。
カラビナとスリング、ロープはセットで持っておきましょう。
また、ロープにもいろいろあり、クライミングでは「ダイナミックロープ」が主流です。
伸び率が大きいダイナミックロープは、中でもダブルロープが一番安心です。
ダブル、という名前の通り、2本で使います。
他にも、シングルとツインがあり、シングルは1本のみなので歩行時の補助ロープとして使用し、ツインは2本のロープを1本のように使用します。
ダイナミックロープは、軽量で伸び率が大きく、撥水加工がされたものを選ぶといいでしょう。
そして、カラビナ同様に劣化には注意して、メンテナンスや買い替えをしてください。
消防の現場においては、丈夫な「三つ打ちナイロンレンジャーロープ」「カールマントルロープ」が使用されるようです。
登山の装備はしっかりと!
カラビナは、種類もさまざまで、おしゃれなタイプをファッション感覚で付ける方もいますが、クライミングや人命救助など危険な現場では、命を助ける大切なアイテムです。
強度が必要となる使い方をする場合は、事前に使い心地をしっかり確認し、準備しましょう。
また、カラビナだけではなく、ロープ・スリングも日常的に点検してください。
より険しく高い山に挑戦するために、装備に対する意識を高く持ちましょう。