イタリアのクライミングギアメーカー「グリベル」から、雪山登山に必要なアイゼンがたくさん発売されています。
200年もの歴史をもつ老舗メーカー「グリベル」は、何度も改良をかさねて今のアイゼンがあり、今もなお新しいアイゼンの追求をしている一流メーカーです。
そんな豊富な種類の中から、適切なアイゼンを選び、正しい装着方法をおぼえて、快適な雪山登山をしましょう!
200年の歴史をもつクライミングギアの老舗、グリベルとは
グリベル(grivel)は1818年にモンブランの南麓にある、クールマイユールという街で創業されました。
当初は農業用の道具を製造する鍛冶屋でしたが、今では登山用品を製造するメーカーです。
1909年、英国人の登山家であるオスカー・エッケンシュタインがクールマイユールを訪れ、街の鍛冶屋だったヘンリー・グリベルにアイゼンの製作を依頼したのがきっかけで、世界初のアイゼンが誕生しました。
このとき製作されたのは、前爪のない10本爪のアイゼンでした。
その20年後には、ヘンリー・グリベルの息子、ロラン・グリベルが世界初の12本爪アイゼンを製作し、それまで困難であった氷の壁も登れるようになりました。
クールマイユールにある山岳博物館には、ヘンリー・グリベルが作ったアイゼンやアイスアックスなどが展示されています。
博物館では、グリベルが作ったアイゼンの装着方法や爪の変化、その他のクライミングギアの歴史を見ることができます。
今は、グリベル家からゴッピ家が事業を引き継いでいますが、このゴッピ家に経営が移ってから世界各国へ輸出されるようになり、日本でもグリベルが取り扱いされるようになりました。
グリベルの豊富なアイゼンの種類と特徴をご紹介!
グリベルのアイゼンには装着方法の違いと爪の種類があり、これらの組み合わせで、いくつものアイゼンの種類ができます。
装着方法の種類には以下の3種類があります。
●ワンタッチ式アイゼン(Cramp-O-Matic SP)
つま先とかかとの両方を、靴のコバを利用して装着するタイプです。
●セミワンタッチ式アイゼン(New Matic)
つま先はプラスチックハーネス、かかとは靴のコバを利用して装着するタイプです。
●ストラップ式アイゼン(New Classic)
つま先とかかとの両方をプラスチックハーネスで装着するタイプです。
爪の種類には以下の種類があります。
・G14
12本爪、前爪の2本は鍛造仕上げで交換可能なタイプです。
・G12
12本爪のタイプです。
・G10
10本爪のタイプです。
・Air Tech-Crampons
短い12本爪で、岩場が多い雪山向けです。
その他、スキー用のブーツに装着することができる「スキーツアークランポン」という軽量タイプもあります。
グリベルのアイゼンには、色々なサイズの登山靴に対応できるよう、別売りのアクセサリーもありますので、自分の靴に合ったアイゼンを見つけやすいのが特徴です。
前後でしっかり固定!ワンタッチ式アイゼンの装着方法
グリベルのワンタッチ式アイゼンは、登山靴のつま先とかかとにコバがあることが前提です。
つま先とかかとの両方にコバがない靴には装着できません。
装着方法は、まず靴とアイゼンの長さを合わせるため、アイゼンの真ん中にあるプレートを調整します。
かかと側についているピンを持ち上げると、プレートの長さを調整できますので、外れにくいようにきつめの位置にサイズを調整します。
長さを調整できたら、かかとのコバにプラスチック部品をあて、靴側に倒してはめこみます。
ここで緩目にはめてしまうと不安定になり、外れやすくなりますので注意しましょう。
足の小さい人は、プレートの調整だけではサイズが調整できません。
その場合、左右のプレートを交換し、プレートを裏返しにしてアイゼンに装着します。
裏返すことでピンのある方が表になりますので、ピンがひっかかりプレートを短く調整することができます。
あとは、ベルトをつま先にひっかけ、横へまわし、穴へ通してベルトをしっかり締めます。
購入時のままだとベルトは長めにあまり、短く切ってしまう人もいますが、長いベルトの方が小さな力でベルトを締めることができますので、ベルトはなるべく切らずに長いまま残しておきましょう。
対応している靴が多い!セミワンタッチ式アイゼンの装着方法
グリベルのセミワンタッチ式アイゼンは、登山靴のかかとにコバがあれば、つま先にコバがなくても装着できるのが特徴です。
装着方法はワンタッチ式とほぼ同じで、つま先はプラスチックハーネスにはめ込み、かかとはワンタッチ式と同じくプラスチック部品をコバにひっかけて装着します。
あとは、アイゼンについているベルトをつま先のプラスチック部分に通し、横へまわして穴へ通し、しっかりと締めます。
アイゼンの長さの調整方法は、ワンタッチ式と同じく、アイゼンの中心にあるプレートで調整します。
セミワンタッチ式もベルトが長く残りますが、短く切ってしまわず、しっかりと締めやすいように長いまま残しておきましょう。
セミワンタッチ式は、つま先にコバが不要なため、雪山専用の登山靴ではなくても装着できる利点があります。
ワンタッチ式に比べると安定度はやや劣りますが、装着方法をしっかりとマスターできれば、靴を買い替えた場合にも対応しやすいので、セミワンタッチ式のアイゼンもおすすめです。
夏山用の靴にも装着できる!ストラップ式アイゼンの装着方法
グリベルのストラップ式アイゼンは、つま先とかかとの両方にコバがなくても装着できるのが特徴です。
装着方法は、まずはワンタッチ式、セミワンタッチ式と同じく、アイゼンのプレートで長さを調整します。
アイゼンの長さを調整できたら、アイゼンの上に靴を置き、ベルトをつま先側のプラスチックハーネスに通し、足首内側へまわします。
次にかかと側のプラスチックハーネスにベルトを通し、甲外側へまわします。
きつすぎず、緩みすぎない程度にベルトを締めて固定します。
ストラップ式のアイゼンは、登山靴にコバがなくても装着できるため、夏用の登山靴に装着することもあります。
雪山専用の靴ではない場合、靴の素材が柔らかく、アイゼンを固定するときにベルトを締めすぎてしまうと、足自体が締め付けられ、血行不良やむくみの原因となります。
素材の柔らかい靴に装着するときは、きつく締めすぎず、長時間歩く場合は、定期的にアイゼンの緩み具合を確認するようにしましょう。
グリベルのアイゼンを購入するときの注意点とお勧めグッズ
アイゼンは実際に装着する登山靴によっては装着できない場合もあります。
グリベルのアイゼンはスポーツショップでも購入することができますが、アイゼン選びには専門の知識が必要です。
アイゼンの長さが合っても幅が合わない場合もあり、装着したときに、横幅がアイゼンが靴からはみ出ないものを選ぶ必要があります。
アイゼンを購入するときには、実際に履く登山靴を持っていき、お店で実際にアイゼンを靴に合わせてから、購入するようにしましょう。
登山用品の専門店では、専門知識をもったスタッフがいて、その場で装着方法を教えてもらうこともできますので、専門店で購入することをお勧めします。
また、このとき一緒に購入をお勧めしたいのが、アコーディオン型のゴムです。
これはアイゼンの真ん中にあるプレートにつけるもので、雪が付着してダンゴ状になるのを防ぐものです。
雪が固まってついたときに、その都度振り払う必要がないので、これを装着しておくだけで大変便利です。
その他、アイゼンの収納袋が購入時にセットになっているか確認してください。
アイゼンの爪は鋭く、専用の袋へ収納しないと周囲のものを傷つけてしまったり、リュックに穴を空けてしまうこともあります。
例えば、店頭で自分の靴に合ったアイゼンを確認し、ネットショッピングを利用して、最安値でアイゼンを購入するような場合には注意が必要です。
収納袋がセットになっているか記載のないものもありますので、事前に確認するようにしましょう。
用途によって使い分けて、安全な雪山登山へでかけよう!
ワンタッチ式もしくは、セミワンタッチ式のどちらかのアイゼンを一つ持ち、夏用の登山靴にも装着できるストラップ式アイゼンも持っておくと、色々な場面で使い分けができるので大変便利です。
もし店頭にないタイプのものが欲しい場合は、取り寄せてもらい、万全の装備で雪山登山へでかけましょう。
雪山には普段の生活で体験することができない、最高の空間と景色が待っています。