アウトドアを楽しまれる方なら、ゴアテックスという名を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
防水透湿素材の代名詞と言っても過言ではないゴアテックス。
しかし、知名度に反してどのようなものか、また長持ちさせるための普段の手入れ方法など知られてないことも多く、誤った方法で性能を落としてしまっていることも多いようです。
今回は、あまり知られていないゴアテックスの詳細と、性能を維持するために乾燥機やコインランドリーをどう利用すれば良いのかを解説していきます。
ゴアテックスの登場
ゴアテックスの名はよく知られていますが、知名度の割には詳しいことはあまり知られていません。
まずは、ゴアテックスについて詳しく述べていきます。
ゴアテックスは、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が製造する防水透湿素材の商品名です。
レインウェアを始め、防寒着、ウィンドブレーカー、帽子、シューズなどアウトドアで使用する衣類の生地です。
蒸れずに雨を防ぐ防水透湿素材として最も知名度が高く、様々なメーカーがこの素材を使った製品を開発しています。
始まりは1969年に、ボブ・ゴア氏がシールテープを作るための実験から開発しました。
ビニールなどの石油から製造される化学繊維とは違い、ホタル石という鉱物が原材料です。
この鉱石から抽出したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)というフッ素系樹脂は、一般にテフロンとして、フライパンなどの表面加工に使われています。
このPTFEが加工された製品として、1976年アメリカのアーリーウィンター社のテントに採用されて以来、様々なアウトドア用品に採用されてきました。
実は元々ゴアテックスは、ウェアを作るつもりで開発されたものではなかったのです。
しかし、開発の段階で防水性と透湿性が判明し、雨に強く蒸れにくいことから、アウトドアウェアにも使用されることになったというエピソードがあります。
その防水透湿性能の秘密は、1平方メートルあたり14億以上の細かい孔で、水蒸気は通過しても水は通しません。
また、この樹脂は、人間の体内に入れても拒絶反応が出にくいので、人工血管にも使われています。
以上簡単に、ゴアテックスについてご紹介してきましたが、次にゴアテックスの優れた防水透湿性能はコインランドリーや乾燥機とどう繋がるのか、述べていきます。
ゴアテックスの構造と洗濯と乾燥機で性能維持
ゴアテックスも通常の衣類のように一つの素材でできていると思う方もいるかもしれません。
実は、表面の生地と内側の素材の間にPTFEの膜(ゴアテックスメンブレン)を挟み込んで「ゴアテックスファブリクス」という一枚の生地にしています。
この挟み込むという構造は、ゴアテックスメンブレンだけでは、柔らか過ぎて衣類として必要な強度と張りが出せないためです。
もちろん、表面や裏面の生地も透湿素材でゴア社の基準に合格したものしか採用されません。
ゴアテックス製品には、全て黒いタグが付けられおり、厳しい品質検査を合格した証になっています。
縫い目をカバーするシームテープも、同社独自のゴアシームテープのみを採用し、テープの太さや貼り合わせ時の温度やスピードまで基準があり、一切妥協はありません。
各メーカーが作る製品は、ゴア社で生産前にサンプルで降雨試験を受けて、少しでも中が濡れていたら不合格になります。
合格までテストが繰り返され、クリアしないと販売できないシステムになっています。
このように、ゴアテックスは厳しい品質管理基準をクリアして商品化されたものしか販売されておりません。
その素晴らしい透湿性能を維持するためには、皮脂などの汚れが大敵です。
ゴアテックス製品の性能低下を防ぐには、洗ってすすいで乾燥させることが重要です。
ご自宅の洗濯機でも洗うことはできますが、コインランドリーには強力な乾燥機があり、より効率良く洗濯を可能にします。
ゴアテックス製品の洗濯のタイミングはいつか
ゴアテックスは、比較的高価な衣類なので洗うことで生地を傷め防水透湿性能が落ちると思われる方が多いようですが、これはまったくの誤解です。
逆に長く性能を維持させるためには、洗うことが必要なのです。
一般に洗濯することで衣類の生地は傷むと考えられていて、高価な衣類は専門の業者にドライクリーニングなどに出しますよね。
たしかに、表面の撥水性能は摩擦で次第に落ちてくるので、長年使用すると撥水スプレーなどで補強することも必要になってきますが、当初は加熱で回復させることができます。
しかし、ゴアテックス製品の防水透湿性能は、ゴアテックスメンブレンが持つ本来の性能で洗っても落ちるものではありません。
そして、ゴアテックスメンブレンの防水透湿性能の要である1平方メートルあたり14億以上の細かい孔が、皮脂などの汚れによって塞がれると、ゴアテックス製品としてのパフォーマンスが低下します。
このパフォーマンスの低下は、洗うことで防ぐことができます。
また、洗う頻度ですが、汚れたら洗うだけではなく、定期的に洗うのがベストです。
なぜならば、蒸発した汗が生地を通過して外に出る時に、皮脂汚れがゴアテックスメンブレンの孔に溜まっていくからです。
また、洗濯したといっても表面に洗剤が残ってしまうと透湿性能が下がり、撥水性能も落ちてしまいます。
そのため、洗ってしっかりすすいで乾燥させることが重要です。
家庭用の洗濯でもいいのですが、やはりコインランドリーで洗濯・乾燥機を使用すればより効果的です。
ゴアテックス製品をコインランドリーで洗濯する前の事前準備
洗濯をする前に、必ず確認しておかなければならないことを見ていきましょう。
1.表示タグの確認
まずは、洗濯表示タグを確認し、洗濯機がOKか手洗いのみかを確認します。
乾燥機が使用できるかもこの時に確認して下さい。
2.洗濯ネットを準備
他の衣類と絡んだりしないよう、洗濯ネットにウェアを入れて洗います。
3.中性洗剤を使用
洗剤は液体タイプを使用します。
固形石鹸はゴアテックスメンブレンの孔を塞ぐ可能性もあります。
コインランドリーで洗濯する場合は、特に確認して下さい。
なお、柔軟剤や漂白剤、染み抜き剤は絶対に使わないで下さい。
4.ファスナー・チャック・ベルクロはすべて閉めておく
洗濯中や乾燥機内で動くことで、そのものが破損したり、生地を物理的に傷付けるのを防ぐために必ず閉めておきましょう。
家庭で洗濯する際も、コインランドリーでの事前の準備と同じですので、参考にして下さい。
ゴアテックス製品の洗濯表示タグは、製品の用途によって表面の素材が異なっていれば違いますので、わかっているつもりにならず必ず確認することを忘れないで下さい。
コインランドリーでの洗濯方法と乾燥機に入れるまでの手順
では、コインランドリーでの洗濯手順をご説明します。
1.洗濯ネットに入れる
洗濯機や乾燥機の中で他の衣類に絡まないようネットに入れて洗濯を行います。
ネットのファスナーの閉め忘れに注意して下さい。
2.40℃以下のぬるま湯に中性洗剤を入れて、洗濯開始
中性洗剤は少な目にして、40℃以下のぬるま湯を使用しましょう。
洗濯機に洗う強度が調整できれば 弱またはソフトに設定して下さい。
その際、泥汚れの酷い服とは一緒に洗わないで下さい。
繰り返しになりますが、柔軟剤、漂白剤、染み抜き剤も絶対に使わないで下さい。
参考までに、手洗いの場合もぬるま湯で泡立てながら洗います。
ドライクリーニングについては、ゴア社では推奨していませんので避けた方が無難です。
3.すすぎを重点に、脱水はしなくてもOK
洗剤や汚れの残留は、表面の撥水性能の低下やゴアテックスメンブレンの細かい孔を塞ぐことに繋がりますので、すすぎは特に念入りに2回以上行います。
脱水については、ゴアテックス製品は、水を通さないのでしなくてもかまいません。
コインランドリーの利点は乾燥機
ゴアテックス製品は、洗った後の処理が重要になります。
それは、「熱を加える」という作業です。
ゴアテックスの製品は、熱を加えることで、表面の撥水性能が回復します。
ご自宅の洗濯機で通常の洗濯をした場合、水を切って影干しし、完全に乾いたらあて布をしてアイロンがけを行います。
その際、生地を傷めないように温度は低温に設定して、スチーム無しでアイロンがけを行う必要があります。
しかし、コインランドリーの乾燥機を使う場合、以上の手間が省け大幅に後処理が楽になります。
コインランドリーの乾燥機を使用する際は、標準の温度設定で乾燥させ、乾いてからも20分以上を目安にして温風で乾燥機に入れておくだけです。
乾燥機を利用すると、アイロンがけよりも全体に熱が回るので、場所むらがなく手間も省くことができます。
また、新しい製品場合、撥水性能は加熱で回復しますが、長年使用の製品は撥水性能が低下している可能性があります。
その場合は、撥水スプレーを全体に吹きかけ、乾燥させましょう。
ゴアテックス製品を末永く快適に使うために
その名前と防水透湿性能があるというのは知っていても、実はよく知られていなかったゴアテックスとその取り扱いについて述べてきました。
生地を傷めないためにできるだけ洗わないということは間違いで、洗濯と乾燥を汚れた時だけでなく定期的に行うことが、性能を維持することに繋がることを理解して頂けましたら幸いです。
ゴアテックス製品の快適さを末永く保っていくために、便利なコインランドリーを存分に利用して下さい。